プロの試合の統計を見る②

プロの試合の統計を見る②

ピックルボールにまつわる統計的な数字を実際にプロの試合を分析して検証する企画の第2弾をお送りします。
ピックルボールのスコアリングシステムはサイドアウト制が採用されています。得点できるのはサーブ権を持っている時だけです。
これがどのような影響を及ぼすのか、考えたことはありますか?
11点を先に争うわけですが、実際は何ポイントぐらいを争っているのか?
また連続得点はどれぐらい発生するのか?
それは試合の勝敗にどれほどの影響を与えるのか?
を、今回は見ていきたいと思います。
サイドアウト制とラリーポイント制の違い
言葉のややこしさを解消するうえで今回は
- 実際に得点が加わった場合=得点(スコア)
- リターン時に相手サーブを破ったのも含む全争い=ポイント
と表現させてもらいます。
ポイント=「ラリーポイント制で争った場合のスコア」、「1ポイントずつすべてを得点として計算した場合」と置き換えることもできますね。
ミックス決勝で検証
11月23日に行われたフロリダ州レイクランドで行われたヴェオリア・レイクランド・オープンのミックスダブルス決勝戦
「ベン・ジョンズ&アンナ・リー・ウォーターズ対JWジョンソン&ジョルジャ・ジョンソン」
で検証したいと思います。

試合はベン&アナ組が5ゲームを擁しての勝利。
第1ゲームの7-9-1では100ショットもののラリーが続きました。
これは、PPAによれば、2022年初頭以降の決勝戦で最長のラリー数だそうです。ラリーは1分34秒も続き、アンナはクロスコートディンクを36本も決める熱戦でした。
▶「PPA」公式YouTubeより
トータルポイント数は?
すべて手動でカウントした結果、各ゲームのスコアと、実際に奪ったポイント数は、以下のようになりました。
ポイント差で見ると115‐89と、全204回の戦いがありました。
スコア同様にベン&アンナ組の勝利。
両ペアのスコア合計に対してポイント合計の比率は、1.92~2.74倍。
実際のスコアより平均2.36倍多いということが分かりました。
| ミックスダブルス金メダルマッチ ポイントの行き来 | |||||
| ゲーム | スコア | ベン アンナ | JW 兄妹 | 計 | 倍率 |
| 第1G | 10-12 | 22P | 24P | 46P | 2.09 |
| 第2G | 11-4 | 23P | 14P | 37P | 2.47 |
| 第3G | 11-2 | 17P | 8P | 25P | 1.92 |
| 第4G | 8-11 | 25P | 27P | 52P | 2.74 |
| 第5G | 11-6 | 28P | 16P | 44P | 2.59 |
| 通算 | 51-35 | 115P | 89P | 204P | 2.36 |
ただし、第3ゲームのジョンソン兄妹は8ポイントを奪いながら得点は2点にとどまりました。
その差は4倍。
リターンの際にポイントを奪いターンオーバーこそしましたが、サーブ権のある時にポイントが奪えなかったことが分かります。
逆にベン&アナは11点奪うのに17ポイントしか必要ありませんでした。
その差は1.5倍。
連続得点など、かなり効率的に得点が挙げられたと想像されます。
第1ゲーム
ではより細かく、各ゲームごとに、得点とスコアの関係性を見ていきましょう。
第1ゲームはスコア12-10の大接戦でジョンソン兄弟が取りました。
次の図はサービス権がある時に両ペアが奪った得点が何点だったか、その回数が何度あったかを示すものです。

ほとんど互角ですが、第1ゲームでは2点を奪ったのが
- ジョンソン兄妹=2回
- ベン&アンナ=1回
2人のサーブ機会で1点も奪えず0点で終わったターンが
- ジョンソン兄妹=1回
- ベン&アンナ=2回
このわずかな差が、僅差でジョンソン兄妹が、このゲームをモノにする結果につながったと考えられます。
実際の得点経過は次のようなものでした。
- スコア9-7でジョンソン兄妹リード
- ベン&アンナにサーブ権が移る
- ベンのサーブ時に3連続得点し、ベン組がスコア10-9で逆転
- だがアンナのサーブ時に0点に終わる
- ジョンソン兄妹にサーブ権が移る
- JWのサーブ時に3連続得点し、スコア12‐10で終了
ベンのサーブ時には、100ショットのラリーを制すなどして逆転しましたが、
ゲームラストの4連続ポイント(サーブ権を奪い返した後3連続ポイント)でジョンソン兄弟が逆転しました。
トータルポイントは24-22。わずか2ポイント差。
仮にピックルボールが全ポイントを加味するラリーポイント制を採用していたとしても
本当に抜きつ抜かれつの僅差の攻防が続いていたことがわかります。
第2、3ゲーム
第2、3ゲームは、ベン&アンナが比較的楽に取り、1ゲームアップのリードを奪いました。
ここも両ペアのサービス時の得点に分けて見てみましょう。

第2ゲームでは0点に終わったのが、
- ベン&アンナ=1回
- ジョンソン兄妹=3回
2点に終わったのが、
- ベン&アンナ4回
- ジョンソン兄妹0回

第3ゲームは0点に終わったサーブ回は両ペア1回ずつで同じでした。
ですが、両ペア1度ずつのサーブ時に2点奪ったのが
- ベン&アンナ=1回
- ジョンソン兄妹=0回
同じく3点奪ったのが
- ベン&アンナ=1回
- ジョンソン兄妹=0回
そして何より得点に大差が付く理由になったのが、ゲーム終盤、6度目のサイドアウトで得たベン&アンナのサーブ権時。
ここまでスコアは5-2でしたが
ベン2連続得点、さらにアンナ4連続得点という怒涛のラッシュ。
この完全な時間帯により、11-2で第3ゲームを奪うことになりました。
サイドアウト制の特徴を活かして、想像通り、サーブ時に効率よい連続得点を挙げていました。
第4ゲーム
第4ゲームは11-8の大接戦でジョンソン兄妹が取り返します。

9-8のスコアでジョンソン兄妹がリードした終盤。ポイントで数えれば24-25とほぼ並んだところで、ジョンソン兄妹にサーブ権が移動。
JW、ジョージャでそれぞれのサーブで1点ずつを奪い、ポイントは25-27。
第1ゲーム同様、わずか2ポイント差の勝利。
ゲームカウント2-2と並びました。
このように得点が接戦になる場合は、ポイント数も非常に拮抗する様子が分かります。
第5ゲーム
第5ゲームは2度目のサイドアウトで得たベン&アンナのサーブ権時に試合が動きます。
ベンが4連続得点でスコア4-0とイッキにリード。

さらには12度目のサイドアウトで得たベン&アンナのサーブ権時。
スコア8-6とまだ競っていましたが、
ラストはアンナが3連続得点で11-6と勝負を決めました。
プロから学べること
ここまで5ゲームの争いを通じてわかったことをまとめていきましょう。
連続得点が勝率アップにつながる
サーブ権がある時に、相手よりいかに長い連続得点のターンを作るかが大事です。
第3ゲームで6連続得点、第5ゲームで4連続得点を挙げたベン&アンナが勝利していることからも明らかです。
そこまでの連続得点がなかったとしても、ゲームを奪った方は、必ずサーブ時に2点、3点などの項目のいずれか1つ以上で相手より多く得点しています。
サーブ権のある時だけ得点が入るサイドアウト制では、サーブの重要性がこれまで多く語られてきました。また同時にリターンをミスすると即座に失点に繋がってしまうため、リターン失敗は絶対に避けたいとも考えられています。
しかし、プロの場合、ここでミスすることはほとんどありません。
相手を沈ませ、自分たちは波に乗る。
そんなアグレッシブな時間帯を作れるように、常に戦略を練り、確実にギアアップしている様子が見て取れます。
0点で終わるターンを作らない
当然、連続得点を目指していますが、実力が拮抗している場合、そこでの差は簡単にはつきません。
次に大事になるのは、ダブルスで通常2回あるサーブ権時(最初の0-0-2は除く)に、いかに得点を積み上げるか。
逆に言えば、いかに0点で終わってしまうターンの回数を少なくするか、が重要です。
接戦になった第1、4ゲームは、いずれもジョンソン兄妹の方が、0点に終わった回数が少なく、それがゲームを奪うことにつながっています。
パートナーのサーブ権時、早々にポイントを失って、自分にサーブ権が回ってきたら、なんとか1点でも取れるように集中する。
そのわずか1点の粘りがゲームの行方を左右します。
まとめ
相手に得点を許さないピクルドで勝った場合は11ポイントで終わりますが、出現率はかなり低いです。
今回の少ないデータをもとに考えると、
実際は1ゲームあたり15~70ポイントほど争うと考えれば良いでしょう。
その点を踏まえて、息切れすることなく、連続得点を奪える時間帯を探らなければなりません。
この試合の5ゲーム計204ポイント。テニスと比較すると、競った3セットマッチと大体同じぐらいのポイント数を争ったことになります。かなり激しい攻防が繰り広げられたことが分かりますね。
| ピックルボール サイドアウト制のまとめ | |
| 項目 | データ |
| 得点方法 | サーブ権がある時だけ |
| 連続ポイント | 非常に価値がある。3連続得点以上はゲームの勝敗を左右 |
| 総ポイント数 | サイドアウト制の1.5~4倍 |
| 点差の付き方 | 1度のラッシュで大きく開く。逆に考えれば大逆転も可能 |
| 勝つペアの傾向 | サーブのターン時平均1.5点以上取る |













