両手バックドライブのコツ

両手バックドライブのコツ

片手バックハンドのドライブについては、先にご紹介しました。今回は両手バックハンドのドライブについてです。フットワークやユニットターンについては片手の項をご参照ください。
テニスのダブルハンドとは違う点に絞って解説していきます。

アガシの証言
最近のテニスでは左手主導型が多いようです。それぞれの腕の力の入れ具合に関して「左手7割、右手3割」と言う方もおられます。ですが、一昔前までは「左手5割、右手5割」の感覚の方もたくさんいました。
次の動画ではテニス界のレジェンドでピックルボーラーのアンドレ・アガシ(55歳)が登場します。グランドスラム8度制覇。テニスでは両手バックハンドの名手として知られました。
ピックルボールを始めて最初に驚いたことが、この両手バックの違いだった、と非常に興味深い告白をしています。
▶「BK Pickleball」動画より
「テニスでは右手が実際に仕事をしてインパクトゾーンの深い所まで移動して、その後、左手でフィニッシュします」
テイクバックからインパクトにかけては右手主体で動き、インパクト直前、ヘッドが返ってきてフォロースルーまでは左手の作用が強く効く感覚のことを言っているのだと思います。
「ですがピックルボールは全く逆で右手は乗っかるだけで左手が仕事をします」
その理由として「パドルはストリングスに比べてボールが長く留まることができないためです」と前回の片手バックの項でご説明した、接触時間の短さを上げています。
右手で引っ張る感覚が強すぎて、方向を定めるのに非常に苦労したそうです。
そしてYouTubeを見て研究したそうです。
「右手主導で動き出して打つのはダメだ」と気付いたと言います。
左手で打つ
次の女子プロ、タミー・エムリッチ選手(32歳)も同じような感覚を「秘密」として明かしています。こちらも元WTA170位のプロテニス選手でした。
「バックハンドは左利きのフォアハンドです。私が両手が互いに争わないようにしています。右手は左手の補助としてあるだけです。つまり、私のすべての力、すべての強さは左手から来ています。右手はただ乗っかるだけで、左手はスイングの間中、ずっと使っています」
「もし試せるなら左手だけをもっと使うようにしてみて。そうすればバックスイングがずっと自然になって、魔法のように良くなります」
▶「Ed Ju」動画より
パドルはラケットよりも短く軽いです。両手でヘッドを効かすよりも、左手1本で打った方が圧倒的にヘッドが走っている感覚が出ます。腰付近にまでボールのバウンドが跳ね上がることもほぼなく、右手でリードするようにして打つ時間的余裕もありません。
エムリッチ選手は「70%左手」という表現も使っていますが、
元テニス経験者の方ほど
実際は、ほぼ左手で打つという感覚で良いのではないかと思います。
少ない上下動
次の動画では、18歳にしてトップに上り詰めた、クアン・ドゥオン選手(19歳)の両手バックハンドのスローモーションが見られます。こちらもジュニアでトップクラスだったテニス経験者です。
テイクバックから非常にコンパクトで、頭の位置の上下動が全くと言っていいほどありません。前進するための推進力からか最終的にパドルヘッドは頭の上まで上がっていきますが、振り抜いていると言えるような、力が入っているフォローは胸の前あたりで終わっているように見えます。
▶「Backpaddle Pickleball」動画より
小さいフォロースルー
次もトッププロ、アニック・ロハニ選手(27歳)のスローモーション動画です。インパクトの後、左足が前に出てくるヒップローテーションをうまく使っているのが印象的です。
力の伝達がスムーズなこともあってか、フォロースルーは非常に小さいです。
クアン・ドゥオン選手よりもさらにコンパクトで完全に右胸の前あたりで終わっています。
▶「Pickleball Studio」動画より
ロハニ選手は動画の中でも、ごまかしが利かない両手バックでは、フットワークが最も大事だと強調します。両手バックでパッシングを1発で決めるのは、非常に難しいとも語っています。ですので次のショットへの準備を最優先しているフォームだと感じます。
片手も両手もテニス以上に低くコンパクト、そして次へ早く移行する様子が分かっていただけたのではないでしょうか?
シングルスでないと、なかなか打つ機会も少ない両手バックですが、狙われた際、苦手意識があると、とても困ります。ぜひテニスとの感覚の違いを、プロの証言、スローモーション動画から早めにつかんでください。