ドロップを極めよう②

ドロップを極めよう②

前回に続いて、「サードショットドロップ」についてです。
特にテニス経験者で、短いショットを打つことに苦戦している方へ向けて、イメージを変えてもらいたい点を中心にお送りしています。

今回は、非常に参考になる動画を見つけたのでシェアさせていただきます。元テニスプレーヤーでドロップショットが安定しないという女性のレッスン形式の動画です。
▶「Josh J Pickleball」YouTubeより
「サードショットドロップが安定しない」という悩みの内容が、同じくテニス経験者の私と、まったく一緒でした。
順を追って、レッスン内容を詳しく見ていきましょう。
ガットでボールはつかめない
動画の序盤では前回、私がテニスで抱くイメージを払拭するようにお伝えした点を、具体的に生徒役の女性に伝えていきます。次の3点の言葉が印象的です。
- ストリングス(ガット)に留まり揚力を生み出すわけではない
- ループのスイング軌道でも揚力は生み出せない
- パドルがクローズドに閉じているとボールがつかめない
揚力とは、垂直方向、上方向に持ち上げる力のことを言います。
すなわち、パドルを下から上へ振り上げる軌道を描かずには、ボールはネットを越えていかないということを断言しています。
「ボールを潰せ」「強くワイパースイングで擦り上げろ」と教えられることが多い、テニスとは全く逆のイメージではないでしょうか。
お玉でボールをキャッチ練習
動画は進み、改善に向けて、いくつかの修正法を試します。
まず3つの言葉でアドバイスします。
- できるだけ早くオープンフェイスを作りましょう
- それをボールの下に差し込みましょう
- 揚力を生むことを最優先しましょう
そして網状の穴開きお玉のような器具を持ち出します。
ワンバウンドさせたボールを、そのお玉の上に乗せてキャッチする練習です。
これでパドルをボールの下に差し込み、持ち上げるイメージをつかみます。

次に打ち出されたボールを1度パドルフェイスで小さくワンバウンドさせてから、打ち返す練習へと段階を進めます。いわゆるダブルタッチトレーニングですね。オープンフェイスの感覚をつかむ練習です。
この2種類の修正法により、ガットに引っ掛けてボールを擦り上げるのではなく、パドルをボールより先に下に差し込んで待ち、そこから持ち上げるように打ち出していくという点を強く意識づけします。
ティーに置いたボールを打つ練習
次に「置きティー」と言われる、ボールを空中に浮かした状態からボールを打ち出す練習を行います。
ティーを一旦打ってからボールを上方向に打ち上げるのではなく、あらかじめティーの下にパドルをセットして、ティーに触らず、ダイレクトにボールにパドル面を当てるようにするのがポイントです。

C字やU字といったスイングの後方の無駄な部分を排除し、
より直線的な動きを強く意識します。
この2つの練習は、パドルをボールの下に入れる、パドル面を変えずに直線的に打ち出す、イメージをつかむ上で非常に役立ちます。
ボールの上に体がいる
動画では最後のアドバイスとして、レッスンを受けている女性の左肩が開きすぎている点を修正します。
その際には「上体がボールの上にいるようにしましょう」との言葉を送ります。
テニスでスピンをかける場合、大きなスイングで擦り上げたあと、ラケットを首に巻き付けるような位置にしたり、より現代的な打ち方になると左腰付近に来るまで振り込むように指導されます。
ですがピックルボールでは、右利きの場合、右半身側でスイングが終わるのが基本です。その方が振り出したパドル面は打ち出した方向にできるだけ長く向いた状態に維持できます。
左肩がベースラインに平行になるまでひねり戻すのではなく、半身の低いままの姿勢でいることを「上体がボールの上にかぶさったままにしましょう」という表現で伝えています。
最初の1歩を踏み出した時にパドルは下にある
そして動画終盤のアドバイスが、あまりに明確でした。
「最初の1歩を踏み出した時に、パドルはボールの下にある」というものです。
右利きでいえば、前足の左足が地面に着いた際に、テークバックは完全に完了しているはずです。
その際、パドルはヘッドが立っている状態から水平に落ち始めている状態にあると思っているテニス経験者の方は多いのではないでしょうか。
私はそうでした。

左足を着いたと同時にパドルヘッドは地面側に向いています。グリップエンドが相手側に向いていて、そこからリストを効かせて、スイングスピードが上がってくるような運動連鎖は起こりません。

とはいえ、少しぐらい上から下への動きはあるんでしょ? とテニス歴が長い人ほど思うのだと思うのです。最初からヘッドダウンというのは、かなり違和感ありますよね。
ですが、騙されたと思って、1度、後方の無駄な動きをすべて排除してみてください。
テニスのように相手のボールが重くて押されるなんてことはありません。
コンパクトなテークバックではなく、完全なノーテークバック、ヘッドダウンスタートを試した瞬間、きっと「これか!」と気付く感覚が得られると思います。
何より動画の女性のサードショットドロップ、かなり安定したと思いませんか。
