高さによる「支配」を考える

高さによる「支配」を考える

テニスと違う空間の使い方
大阪から情報発信中の私「ピックル坊や」はテニスからピックルボールに転向する際、戸惑ったことの1つが空間の使い方です。
コート平面とその上にある空間を3Dの立体で考えてみましょう。
テニスではベースライン深くに高く跳ね上げて、相手を後方に追いやった後、アングルへ角度のついたボールを送って、長い距離を走らせ、相手からの返球の主に左右のコースを限定するといった戦術を取ったりします。
ですが、ピックルボールの場合はベースラインから左右高低を使って打ち合うというより
圧倒的にキッチン前に詰めることが有利になります。
今回は、その理由について、深く考察したいと思います。
高さは正義
ピックルボールでは「ネットより高い位置で打てる」=「圧倒的な攻撃優位」です。
その理由に次のようなものが挙げられます。
- 打点が高いと下方向に打ち込めるため、相手が防御しづらくなる
- 高い位置で取るとネットミスやアウトミスのリスクが少ない
- 相手は低い位置で取らされる可能性が高くなりネットを超えるにはボールをさらに打ち上げる必要がある

より分かりやすくするため、胸元から頭上にかけて、次の図のような赤い空間があるとイメージしてみて下さい。
この空間内に相手のボールを引き込むことができると、まるで一段上の台から攻撃しているような状態になります。
圧倒的に優位な状態になることが分かりますね。
つまり、ネットより高い打点を得るというのは「支配権を握る」ことに等しいです。
横から見ると、低めにされた方がネットミスせず、かつ相手に決定打されないエリアが、いかに狭いか、よく分かります。

テニスのように左右と高低の角度をミックスした戦術より、
圧倒的に高低に重点を置いた戦術が多くなるという訳です。
高さを引き出す戦術
あまり言語化されているものを見ませんが、実際、この「発想」は非常に基本的かつ高度な戦術として多くの上級者が使っています。代表的な手法を紹介します。
ネット前に沈めるサードショットドロップ
テニス経験者の場合、サーブ後、相手から返球されたボールをワンバウンドさせた後、ドライブで強打することを好むプレーヤーも多いでしょう。
ですが、いくら強打しても、キッチン前に相手が先にいる状況になるため、リターン側が圧倒的に有利です。
それを打開できるのが、サードショットドロップで
ネット前に詰めた相手の足元に突き刺さるようなボールを狙うことです。
相手のボレーやディンクは打ち上げる軌道になるため、簡単に攻撃することができません。あなたがネット前に着いた時、ボールが浮き上がってくるタイミングでとらえることができれば、上から攻撃することができます。
強烈なドライブでポップアップさせる
サードショットドロップの方がネットミスする可能性が高いため、ドライブで勝負する場合もあります。その際は、すでに前にいるストレート方向のプレーヤーのボディー目掛けて低くて速いボールを送るなどして、ポップアップを誘い出します。
相手の予測に反して差し込ませた状態にでき、反応時間を奪えた場合を考えてみましょう。
この際の自然なリアクションとしては、体はのけぞりように伸び上がることが多いです。
この状況を生み出せれば、ボールは上方向に打ち出せれ、バウンドも高くなることが多いです。
次のショットで上からボールを叩くことができます。
ノーマンズランドやベースラインに釘付けにする
ピックルボールには「ノーマンズランド」(無人地帯)と呼ばれる、本来ならそこに位置取りすることは好ましくないとされる場所があります。

それがキッチンラインとベースラインの間の領域です。
このベースラインよりも距離の短い位置からネットを越え相手コート内に落とすと考えると、ボールの軌道はどうなるでしょう?
必然的にベースラインから打つ時より上方に打ち上げる必要がありますね。
この位置で相手に上から2球、3球と打ち込まれ、ネットミスしないで返球しようとすると、どうしてもボールは浮きやすくなります。

ベースラインに釘付けにされても、左右の角度を付けられたり前後の守るべきエリアが増えるので、どうしても打点が低くなります。
よってボールが徐々に上方向に打ち出されていくという訳です。
体勢を崩させてボールを打ち上げさせる
相手の体のバランスが崩れるような位置にボールを送ると、うまく打点に入ることができず、エラーを引き出すことができます。
そのミスの最も顕著な例が、必要以上に上に打ち上げる軌道になってしまうことです。
ディンクで左右に揺さぶったり、スピードの緩急で、相手の腕を伸び切った状態にして打点を外せると、ネットミスだけはしたくない相手は、上の空間を狙うしかなくなります。
スピンやスライスで相手を揺さぶるのも同じ理由です。
パワーで押すばかりではなく、ノーバウンドで打つには低く、ワンバウンドさせるには打点が遅れてしまうような絶妙な位置で相手に打たせても、ボールは上方向への軌道になります。

陣取り+空間取り
テニスとは少し違う戦術的な部分が少しは分かっていただけたでしょうか?
「こちらの打点を上げる」=「相手の打点を下げる」ということでもあります。
まずは先に前に詰めて平面的に優位な「陣取り」。
次に相手に上向きに打たせる「空間取り」。
左右前後にカバーする範囲が広いテニスでは、平面的な角度でも十分に決定打となりますが、
コートが狭いピックルボールでは、こここそが強く意識しなければならない部分です。

なぜ攻撃が無理なら、低いリセットのボールでイーブンに戻すのか。なぜサードショットはドライブだけではダメなのか。
真の意味で理解できましたか?
この「勝ち筋」が頭で読み解ければ、イッキにピックルボールの上達が進むはずです。











