デッドディンクは悪なのか

デッドディンクは悪なのか

前回、アグレッシブな「トップスピンディンク」が主流になりつつある、という話をしました。ピックルボールの本場アメリカで、その対象的な言葉として、よく使われるのが「デッドディンク」です。


回転のほぼかかっていない、遅い球。いわゆる「死んでいる球」「次にやられるのが分かっているディンク」という意味になるのでしょうか。
ですが、デッドディンクはすべて悪い訳ではなく「いいものと悪いものの2種類がある」という考え方があります。
効果的なモノもある
次の動画では、次のような問いかけがされています。
▶「All Things Pickleball」YouTubeより
「デッドディンクは、スピードやスピン、いわゆるアクションのないディンクとして分類されます。多くの人は良くないショットとして認識していますが、本当にそうでしょうか?」。
そして、男子トッププロのJWジョンソンやディラン・フレイザーが、この「デッドディンク」をよく用いていることを引き合いに出します。
そして「デッドディンク」はすべてが悪ではなく「2種類がある」と訴えます。
「キッチンの手前で小さく跳ねる浅いデッドディンクと、キッチンラインを越えて高く跳ねるデッドディンクです」。
「浅いデッドディンクはどうすることもできず、攻撃を許しません。浅いディンクショットは相手をイライラさせるのに効果的です」と結びます。
スピンだけでも難しい
大阪から情報発信中の私「ピックル坊や」も、テニス出身者。
ディンクはトップスピンを主体に組み立てています。
足をしっかり動かして右足の前にボールを入れ、スピンをかけて打っていきます、と言い切りたいところですが、時にそれが難しいと感じるボールがあります。
それが、先のデッドディンクのうちの1つ、いわゆる「浅いデッドディンク」です。
- リストを使いすぎてミス
- ネットを越えるためボールを上げすぎてカウンターされる
- 無理な体勢で強引に打ちに行ってミス
いわば、「ただの死んだボール」にやられている訳です。
本来なら、こちらも「デッドディンク」で我慢強く打ち返せばいいのでしょうが、打ち気にはやってトップスピンで構えていると、切り替えるのは簡単ではありません。
つまり、浅いデッドディンクは、見た目以上に厄介なショットなのです。
使えるデッドディンクとは?
次の動画では真の意味の「デッドディンク」の定義を、次のように結論付けています。
「何の目的もなく、相手に何のプレッシャーも与えない、相手に予測可能なショットを打ってしまうこと」。
▶「High Five Pickleball」YouTubeより
そして目標とするべきは、その全くの逆だと主張します。
「何らかの目的があり、相手からの攻撃を不可能して相手に精神的かつ肉体的なプレッシャーを与える、相手が予測しづらいショット」ということになります。
なるほど納得ですね。
相手を不快にさせる
スピンを打ったり、ペースを上げられないから結果「デッドディンク」を打つのではありません。
相手のタイミングを外したり、簡単には攻められないボールをあえて送ってミスを誘発したりする、というのが第1の目的です。
端的に言えば「相手を不快にさせるためのショット」の1つだと言えるでしょう。
真の目的とは?
目的という意味をさらに突っ込んで考えれば、実は相手のミス待ちだけではありません。
あなたからの「デッドディンク」で相手がスピードアップしてきたら、それを待ち構えてカウンターショットの餌食にします。
いわゆる「ベイトボール」(誘い球)としての使い方です。

こちらがディフェンシブになったと見せかけて、キッチリと次の罠を仕掛けておく作戦です。
ハンドバトルに自信があれば、待ち構えて先手を打つことほど、有利に展開できることはありません。
先のJWジョンソンとディラン・フレイジャーが頻繁に「デッドディンク」を使っていたのは、実はこの作戦のためだったのです。
意図あれば有効
スピン一辺倒ではなく、意図を持って、短く、あまりバウンドしないボールを送ります。
ターゲットを、ネットからキッチンラインを半分に割ったネット側に落とせれば十分に効果的です。攻撃できそうで、実は簡単ではない、ゾーンです。
焦った相手が無理やり攻撃してきて、ミスしたら儲けモノ。ネットを越えてきたとしても、予期したあなたは十分に上から下への有利な角度でカウンターを狙えるでしょう。
すべてのポイントを奪おうとせずとも、1球、2球とミスさせることができれば、相手に大きなプレッシャーを与えられるはずです。
用具が進化し、ピックルボールのスピードアップ化が図られても、まだまだ「デッドディンク」の効能は忘れてはいけません。
「デッドディンク」は永久に不滅です!