ファストハンドを手に入れる①

ファストハンドを手に入れる①

日本ではピックルボールで反応良くボールを返すプレーヤーのことを「反射神経がいい」などと言いますが、本場アメリカでは「ファストハンド」(手が早い)などと言うようです。
以前もお伝えしましたが、反応時間は0.24秒しかありません。

ピックルボール界のレジェンド、ベン・ジョンズが「私は西部イチのファストハンド」と冗談っぽく笑っていましたが、どうもイメージは「西部劇のガンマン」のようですね。

反射神経を鍛えるのは難しいですが、「ガンマン」と考えると、もっと効率的に反応時間を短縮できる方法はありそうです。
反応が早く見える人との違い
キッチンライン付近に立った時、反応が早く見えるプレーヤーと遅く見えるプレーヤーの違いを、考えてみました。
すべて「ない」になったので「ない、ない」6パターンと呼ぶことにしましょう。
スプリットステップを踏めていない
リラックスして、相手がボールを打ってくる直前、軽くスプリットステップを踏んでください。
ベタ足では、反応が遅れます。大きく空中に飛び上がりすぎるのも、その間にボールが向かって来てしまうからいけません。手が遅いのではなく、足が自分を引っ張っていた、なんてことよくあります。
気持ちの準備ができていない
ダブルスのディンクの時のあるあるです。パートナーが打ち合っているのを横目で見ながら、急に自分の方向にボールが飛んで来ると、反応できないなんてこと、ありませんか?
常にスピードアップが自分に来ると思って心の準備をする。これ大事です。
このショットで決まった、終わりだと思っても、油断せずボールが止まるまで、必ず次の準備をするクセを付けましょう。
予測ができていない
何度も同じパターンでやられるなんてことないですか?
繰り返されるパターンをインプットして、これから起こることを予測する。
これも反応時間を縮めるうえで、非常に役立ちます。
相手のパドルや動きを見るより前に、パートナーのボールを横目で追いましょう。
浮いていると思ったら、危険信号を働かせて、次のスピードアップに備えてください。下がる時間が確保できそうなら下がっても構いません。距離を取れればその分、反応時間を少しでも増やすことが出来ます。
パートナーが高い距離の長いディンクを打ったら、相手はダイレクトボレーで来るかもしれません。
他にもスピードアップが大好きなせっかちな人、何でもフォアで強打する人など、対戦相手のクセも読むことも大事です。
コンパクトなスイングをしていない
パドルを大きく振り過ぎると、次の準備までに時間がかかります。分かってはいるけど、チャンスボールで、どうしても力が入ってしまいますよね。
スイングをコンパクトにすることで、次への反応スピードは劇的に上がります。
早く反応することは簡単ではありませんが、次のショットに対応することに重きを置けば、落ち着いてプレーできます。
自分なりの工夫をしていない
上級者は素早い反応を得るための、いろいろな工夫をしています。
腕を振り回すのではなく、体幹をひねって両手バックを打つ。相手のコースを予測してグリップを変える。フォア側に厚いセミウエスタンにして、バックは両手でカバーする、など。
プロは実際プレー中、何度もグリップを変えているそうです。

グリップを変えるのには時間がかかりますが、変えることで、より速いハンドリングに役立つことも多々あります。
右サイドにいて、相手が正面からダウンザラインに打ってきたらフォア側はアウトになる可能性が高いので、先にバックで構えてしまう。こんな「ズル」も大事です。
自分のプレースタイルにあった、よりうまくいく工夫を「エッセンス」として加えてみてください。
以下の動画でも学ばせてもらいました。非常に参考になります。
▶「ThatPickleballGuy」動画より
パドルの準備が整っていない
さてここまで来て、1つ抜け落ちてると感じた方は、さては上級者ですね! そう大事な準備姿勢、レディーポジションについてです。
パドルを顎の下に置き、ボールの落下位置をパドル先端で指すように動かしましょう。
ディンクの際は、腕を前に突き出す形も試してみてください、と書くつもりでしたが、どうも、そう画一的ではないようです。
プロの準備姿勢の工夫
次の動画ではプロが採用している、色々な個性的な準備姿勢を紹介しています。
▶「Pickleball Playbook」動画より
JWジョンソンの場合
まずは、プロの中でも最も早いハンドリングの持ち主とされるJWジョンソンです。
パドルはほぼ膝の前、腕をダランとさせて、ヘッドも水平かむしろ下を向いています。
動画を見ていただけると分かりますが、かなり低い位置にあります。テニススクールなら間違いなく「ラケットヘッドを上げて待ちなさい」と注意されてしまう姿勢です。
ですが、カウンターを打つ際、JWジョンソンは、ブロックはほぼ使いません。トップスピンを多用するため「下から上に打つ方が早くて理にかなっている」と動画では解説しています。
顔を守ることを重視せず、ボクサーが相手を挑発するかのように腕をダランと下げいるシーンを見たことはないでしょうか。この姿勢になると、肩に力が入らず、最もリラックスした状態から早いパンチを繰り出せるそうです。その理屈と同じ、とも紹介しています。
もちろん誰にでも当てはまるわけではないでしょうが、
準備姿勢は「こうでなければならない!」と決めつけるものではない、ということが、ご理解いただけるのではないでしょうか。
ベン・ジョンズの場合
若き王者、生きるレジェンド、ベン・ジョンズの場合はどうでしょう。基本に忠実に、常にパドルヘッドが相手の方を向いています。ただテニスの基本姿勢よりは低い、腰の高さぐらいの位置でパドルを構えています。
パドルの先端は顎にあるというよりは、おへそのあたりです。
ネットより低い位置ならブロックでき、高ければ、下から上へのスイングでカウンターを狙えます。一番ニュートラルで移動距離の少ないポジションと言えそうです。
一般に言われているものよりは、低いと感じますが、大多数の人に推奨できるポジションだそうです。
アンナ・リー・ウォーターズの場合
若き女王、アンナ・リー・ウォーターズの場合はどうでしょうか。胸の前にパドルがあり、先端は自分の顎付近にあります。
テニスで最初に教えられるレディーポジションと、ほぼ同じ位置と言っていいでしょう。
ウォーターズは両手バックでのボレーが持ち味です。この点を踏まえると、肩口付近にセットしたところからドライブ気味に打つことになります。よってこの比較的高いレディーポジションが最も効率的ということです。
自分の答えが正解
身長が190センチ近い人も、150センチに満たない人もいます。体格差がほぼ出ないと言われるピックルボールですが、キッチン付近でネットの高さが、体のどの位置に来るのか、人によってそれぞれです。
ロールやフリックが主体なのか、両手バックを打つのか、常に攻撃的なのか、戦術的なのか、プレースタイルも様々です。
テニスでも反応時間がモノをいうリターンでは、プロの個性が出ます。右足を前に出す、背中を立てる、バックのグリップからスタートする、など。
時間がなければないほど、個人の差がより濃く出る部分と考えてよいのではないでしょうか。
迷わせるつもりはないのですが、ベン・ジョンズやアンナ・リー・ウォーターズのベーシックな準備姿勢からスタートして、自分に最も合うものを模索してみてください。
誰に決められるものではなく、自分が最も「ファストハンド」と感じた姿勢こそが「正解」なのです。
最後にPPAのプロの男女ダブルス動画を置いておきます。キッチンで、どのような準備姿勢をとっているかに注目して見てみていただけると、新たな発見があるかもしれません。
▶「PPA Tour」動画より
▶「PPA Tour」動画より
