パドルタップのお作法

パドルタップのお作法
皆さんは試合でパドルタップをしていますか? パドルタップをご存知でない方のために、あらためてお伝えしておきますと、各プレーヤーの持つパドルを軽く叩き合って行う、いわば「ごあいさつ」。これからもピックルボールでは、おそらく切っても切り離せない「コミュニケーション」の1つです。


起源は?何の意味で?
パドルタップが始まった起源は分からないそうですが、創設当初は木製パドルで始まったピックルボールです。ナイスショットが出た時に興奮してパドルを叩きあった光景が容易に想像できます。
またアメリカでピックルボールが大流行したのが、2019年ごろ、コロナ禍の時期でした。屋外で適度な距離を取り、あまり会話をしなくてもできる、最高のコミュニケーションスポーツとして、イッキに広がったと言われています。
手と手を介さなくてもできるパドルの握手は、その背景もあって、より広がったのだと考えられます。
パドルタップの表す意味として、以下のようなものが挙げられます。
スポーツマンシップ
勝敗はつきますが、互いのフェアプレー精神を称え合います。キチンと相手への敬意を伝えます。他のスポーツの握手と同じ意味ですね。
励まし
パートナーがナイスショットを打ったら相手を、いいコンビネーションが決まったらお互いを、称えます。ミスショットをしたり、スコアが負けていても「気落ちせず逆転しよう」という励ましの気持ちをパートナーに伝えられます。
社交的伝統
先にも記しましたが、ピックルボールは、男女問わず、世代を越えて楽しめる「コミュニケーションスポーツ」として発展してきた60年の「歴史」があります。「元気にプレーしていたね」「今後も仲良く楽しもうね」といった、友情や仲間を表す表現として、今後も受け継がれていくでしょう。
いつやるべきか?
とはいえ、アメリカではこの「パドルタップ」を巡って、様々なプチ議論が巻き起こっているそうです。その1つが、いつやるべきなの? そんなに頻繁にやる必要あるの? という声です。
各ゲームごとかゲームセット時か
11点先取で3ゲームを戦うのが一般的なピックルボールでは、ゲームが終わるたびにパドルタップするのが通例です。
しかし、女子プロの試合で1ゲーム目を落とした選手が、パドルタップをしなかったということがありました。
動画再生位置のシーンです。タップしようとネット前に来ていた、もう片方の選手は、空中を叩くような仕草を見せます。2ゲーム目は互いにかなり距離のある状況で、この「エアパドルタップ」を。最終セットが終わり、勝敗がついた後、お互いネットに歩み寄り、通常のパドルタップを行いました。
▶「Pickleball Highlights」動画より
試合中にはライバル心が燃え上がったり、冷静でいられなくなることもあるでしょう。
各ゲームごとではなく、ゲームセット後だけで十分ではないか、という声も多く寄せられたそうです。
とはいえ、今でもプロの試合では各ゲームごとにネットに歩み寄ってパドルタップは行われています。
また一般プレーヤーの場合でも、地域トーナメントの総当たり戦のような場合、かなりの数のパドルタップが行われ、高価なパドルが痛むことを気にする人も現れ始めました。
ということで、一般レベルでは「その場の雰囲気で」という考え方も少なからず出てきているようですが、向こうが歩み寄ってきてくれたら、今のところ断る理由はあまり見当たりませんよね。
ナイスポイント時
パートナーがナイスショットを決めた時は、迷わず称えましょう。とはいえ、興奮してパドルに強くぶつけたり、パドルを強く叩くのはNGです。
パドルがコートに叩きつけられるぐらい落とされた一般プレーヤーが憤慨する動画も、世間を騒がせました。
「称賛」や「励まし」は「声だけで十分だ」という意見も寄せられました。
どんな方法で?
それらの意見を聞き入れて、かつ「伝統」を守るよう、別のタップの仕方も考えられています。
エアタップ
その1つがエアタップです。先ほどのプロが見せたほど、あまりに距離がある状況で叩いてる姿は「嫌悪感」を示しているように感じます。
ですが、味方同士であれば、そばに寄り添い、パドルを差し出しさえすれば、実際に音をさせなくても十分ではないでしょうか。
プロの間でもパドルとパドルではなく、出してきたペアのパドルに、手のひらを優しく重ねて、タップするという光景が広がっています。
もし決まったパートナーがいるのなら「エアの方がいいよね?」「それとも声だけでいい?」と1度、尋ねてみるのもいかがでしょうか。

パドルハンドルタップ
もう1つ、一般的に広がり始めているのが、
グリップ同士をタップし合う「パドルハンドルタップ」と呼ばれるものです。
コロナ禍では汗でベトベトのグリップを寄せ合うことに抵抗がある人もいたかもしれませんが、グリップエンドなら問題ないのではないでしょうか。
これなら失礼な感じもなく、高価なパドルが傷つくこともありませんね。

私が通うピックルボールスクールではこの形が定着しています。でも、1つ気がかりなのは、相手より上にグリップを出すことが威圧的とか、失礼とか、考えておられるのか、下へ下へと下げてくる方が、とても多いということです。下手したらネットに触れながらタップになったりします(笑)。
普通に握手の位置でいいではないか、と思うのは私だけでしょうか。
ハンドタッチ
最後はパドルではなく、手のひら同士を優しく添え合うだけでいいのではないか、という考えです。プレー中のナイスショットに関しては、これが一番自然ではないでしょうか。他のスポーツも、この形が一番多いでしょうから。

ちょっと冗談めかして「お作法」としましたが、実際問題そんなものはありません(笑)。
相手をリスペクトしている姿を示せばいいのですから、握手でも、パドルタップでも、グリップタップでも、すべて間違いではありませんので、ご心配なく。
一番大事なのは、楽しく、仲良く。その象徴が「優しいパドルタップ」なのですから。