ボレーディンクを習得しよう

ボレーディンクを習得しよう

テニスから転向組の私「ピックル坊や」はキッチンライン前でのボレーディンクが苦手です。今回はその苦手を克服できるよう、ミスの原因から考えていきたいと思います。
ミスする理由を知る
次の動画では、プロのジョン・シンコラ選手(44歳=アメリカ)が典型的なミスの例を挙げてくれます。
▶「John Cincola Pickleball」動画より
①パドルを伸ばしてボールを打ちに行く
あなたの体の前側にボールが来ます。パドルは自分の体の前、肘が曲がった通常のレディーポジションにありますが、なんとか届かせようと、腕を急いで前に突き出します。すると、パドルは大きく体から離れていきます。
そして完全に腕が伸び切ってしまった瞬間、前のめりになり、ソフトタッチのコントロールをイッキに失います。
これがボールが上に飛び上がってしまう原因です。
「John Cincola Pickleball」動画より
シンコラ選手のおっしゃる通り。私はまさにこのパターンです。
②ワンバウンドさせるクセがつく
さらに、私の考える、もう1つのミスするパターンは次のものです。
始めのうちは、キッチンラインをキープしようと、下がらず、なんとか腕を伸ばしてディンクボレーしています。すると下から上へ持ち上がることになるため、相手に上から叩かれてポイントを失います。
これが続いたら空中でボールを取ることに自信を失ってしまい、一歩後退するクセがついてしまいます。
そしてドンドン後退して、守るスペースがドンドン増えていってしまいます。ドタバタするのが嫌になって、
挙句の果てには、ワンバウンドさせてディンクをすることを、最優先とするようになります。
そしてボレーできそうなボールが来た際、先ほどのミス原因①の、慌ててパドルを動かす状態になってしまう。
この悪循環に陥ることこそが、典型的なミスのパターンだと思うのです。
解決方法は?
もし、私と同じように、これに当てはまっていると感じる方がいらっしゃったら、次は解決方法を考えましょう。
①ノーバウンドで打てる限界を知る
トッププロのタイソン・マクガフィン(Tyson McGuffin)選手(35歳=米国)の動画からヒントをもらいます。
最も大事なのは、自分のボレーできる限界点を知ることだとしています。
「一般的に、無理な姿勢になると、お尻が後ろに突き出て、腕が真っすぐ伸び、釣り竿を垂らしているような形になる」
と面白いニュアンスで伝えてくれています。
マクガフィン選手のおっしゃる通り。まさに私はこのパターンです(2回目=笑)。
▶「Tyson McGuffin Pickleball」動画より
ピックルボールの本場アメリカで、よく言われる「バブル」という表現があります。
自分の体が大きいシャボン玉やバルーンに包まれているイメージを持ってください。その立体の輪の中から外れてしまった際は、腕が伸び、パドルが体から離れていってしまうサインです。そこ輪の中だけが安心して打てる限界のゾーンという訳です。
マグガフィン選手も、その「バブル」の表現を使いつつ、
膝から下はレッドゾーン、膝から腰はイエローゾーン、腰から上はグリーンゾーンと、さらに分かりやすい目安を設けてくれています。
体の「シャボン玉」から外れた、特に膝下のレッドゾーンはワンバウンドさせる、と決めてしまえば、少しは「迷い」も消えるのではないでしょうか。
②パドルを先に構えた状態を作る
ボレーで処理できる自分の限界点は分かりました。そこから先はどうするのでしょうか? 最初の動画に戻ると、シンコラ選手は腕をキッチンラインより前に伸ばし、肘がわずかに曲がった、自分のボールを捉えられる限界の位置に、先にパドルを置いておくようアドバイスしています。
この状態をシンコラ選手は「フルエクステンション」と読んでいるそうです。
日本語では「目一杯伸ばした状態」となりますが、マグガフィン選手が言うような「お尻が突き出た釣り人状態」になってはいけません。あくまで、ボールを打てる範囲内で極力一杯に伸ばした状態ということを忘れないでください。

確かにプロの中には、ディンク合戦の際、相手のボールがネットを越えるより先に、この状態になり、ボールに「もっと飛んで来い」と言わんばかりにパドルをキッチン前に差し出している選手もいますよね。
通常のレディーポジションから体勢を低くし、腕が若干の余分を持つようキッチンライン前に伸ばした状態で待ちます。
このパドルが一旦止まった「落ち着いた状態」から、ダイレクトで打てると判断すれば、ボールをそのまま呼び込んで打ちに行きます。
その自分のパドルの位置より前にボールが落ちそうなら、パドルを体側に引き寄せて、ワンバウンドさせて打ちます。
シンコラ選手いわく、
先にボールの落下点にパドルを入れて待っておくことができれば、コントロール性は格段に上がるそうです。
これは感覚的に理解できますね。
腕を伸ばさず待っていて、相手のボールが思ったより長くて、慌てて前のめりに腕を伸ばす、これが一番のミスの原因でしたね。
最初から伸ばしておいて、引き込む、この動きなら、そのミスは避けることが出来そうです。
③フルエクステンション移行のタイミングを知る
ですが、先に腕を伸ばして待っていては、相手がスピードアップでチキンウィングを狙った際、どうしても反応が遅れてしまいます。シンコラ選手いわく、これを解決する方法が2つあるそうです。
1つ目は自分がきちんとしたディンクを打ち、相手に簡単にはスピードアップできないボールを送ること。そして
相手がソフトなショットを打つ体勢に入ったのを確認できれば、
通常のレディーポジションから
相手のボールがネットを越えるより先に「フルエクステンション」の形に切り替えます。
2つ目は、自分からある程度アグレッシブなショットを打ち相手を追い込んだ場合。
その際はより早く「フルエクステンション」の形で構えられるでしょう。次のボールをノーバウンド打って、さらに相手の時間を奪うことを狙います。
意識改革が大事
シンコラ選手は
「大事なのはワンバウンドのディンクを打つことが第1目標ではなく、ディンクボレーが第1であるとマインドセットすることだ」と断言しています。
①ボレー
②ハーフボレーか通常のディンク
③下がってディンク(ステップバックディンク)
この順番で判断するように、心がけることから始めてみましょう。
言い換えるなら
①体を前に伸ばしたパドルからボレー
②それができない場合は、パドルを引いてバウンドさせてヒット
③それも難しければ一歩下がってヒット
どうみても、この考え方の方がシンプルですね。
ボレーに苦手意識がある私は、どうしてもボールをワンバウンドさせること、すなわち②を最優先に考えてしまっていました。②→③→①の順になっていたのです。
最も早い決断を迫られる①を3番目の選択肢として、後回しにしていたからこそ、ミスを量産していたのだと、気づきました。
下がる選択も残す
このことを理解したうえで、最終的に下がるという選択をしても、決して間違いではありません。
「フルエクステンション」移行のタイミングが遅れ、このままではミスすると感じたら、ボールをバウンドさせてください。利き足をアンカーのように固定して、その逆足を1歩後ろに下げ、空間を作り出してボールをヒット。すぐに引いた足を戻し、元の体勢に戻ります。
最終的には①②③のうち、どのショットを選ぶか、できるだけ早く、正しい「決断」が大事です。
最大の敵は、どのショットとするか、決めきれない「迷い」です。
ボレーディンクの目的を知る
最後にマクガフィン選手が語っていた、印象的な言葉を付け加えさせてください。
ボレーディンクは攻撃的なショットではありません。自分のポジションを維持しながら徐々に相手のターゲットを小さくしてプレッシャーを与えるショットです。
ノーバウンドで打たれると、視覚的に相手はプレッシャーを感じます。ドンドンと、ターゲットが小さくなっているように感じさせられます。
しかし、安易に後ろに下がると、相手は敵を糸で操れているような感覚になり、ターゲットが広くなるように感じるのです。
▶「Tyson McGuffin Pickleball」動画より
テニス出身者はボレーとなると、どうしても攻撃的に行こうとする傾向が強いと思います。しかし、ボレーディンクは相手の時間を奪い、プレッシャーをかけるためのショットだということを、改めて肝に銘じたいと思います。
仮にこちらが1度ボレーディンクをミスをしても、ただ下がってディンクラリーを続けるよりは、相手のディンクミスを多く誘発できているかもしれません。
練習は必要ですが、苦手を恐れず、やはり「迷ったら前へ」が正しいと思うのです。