ピックルのトリックショット②

ピックルのトリックショット②

前回紹介した「フーディーニ」は右利きのプレーヤーがバックを打つと見せかけて左手のフォアを打つフェイクショットでした。

これはパドルを両手に2本持つことはできませんが、「1本のパドルはいつでも持ち替えることができる」とのルールに則って成立しています。
えっ手で打っていいの?
他にも意外なショットがありますが、ピックルボールのルールの詳細を理解せずして、実際にショットを放つことは困難です。
その最たる例が、次の動画で「フェイク・ドロッパー」や「ザ・トゥー・フィンガー・ドロッパー」と紹介されているショットです。
なんと手でボールを打っているではありませんか?
これって「ありなの?」って驚きませんか?
▶「Enhance Pickleball」動画より
動画ではどちらのショットもリーガル(合法)と紹介されています。
誤解はないように
それなら「パドルを持ってない手で打っていいの?」とお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、その場合は、もちろんフォルトです。
手で打ってしまった場合として、以下のような明確なルールがあります。
USAピックルボール公式ルール規則7.Hより
サーブ後、ボールがプレーヤー、またはプレーヤーが着用または携帯しているもの(パドル、またはパドルに触れているプレーヤーの手首より下の手を除く)に接触した場合。
プレーヤーが両手でパドルを持ち替えている最中、または両手ストロークを試みている最中にどちらかの手が手首より下の部分に当たった場合。
プレーヤーの手がパドルに触れている限り、ボールは依然としてプレー中である。フォルトはボールに当たったプレーヤーの責任となる。
分かりやすく言うと次のようになります。
パドルを握った状態で手首より下(先側)でボールを打つことは有効。
ただしボールが体の他の部分に当たった場合はフォルト。
打っても許されるのは、パドルを握った方の手のみ。
その手というのは手首より下(先側)、すなわち手首から指先にかけてのみ、という規定があります。
手首より先側であれば、手の甲側でも手の平側でもどちらもで構いません。
これは「パドルを持った手だけは、パドルの一部」という考え方に即しています。
卓球も同じ考えですので、ラケットを持った手首や指に当たっても返球できればOK。
テニスやバドミントンでは「ラケットを持った手はラケットの一部ではなく体の一部」となりますので、自らの手に当たった時点で失点となります。
ルール上はセーフ?
先の動画の「ショット」を振り返ってみましょう。
いずれも相手がキッチン手前側に高く弾むボールを打ち上げてしまった状況です。ノンボレーゾーンのため、ノーバウンドでは打てませんが、グランドスマッシュなら確実に処理できます。完全に自分のチャンスボールとなったシチュエーションですね。
1つ目は、強く打つと見せかけた振りかぶった状態から、そのまま手の甲側の指に当ててキッチン手前に落としています。
手の当てる場所を平らな部分にする必要はありますが、パドルを操作するよりも、少しだけはボールの勢いをなくすことができそうです。
2つ目も一旦軽く空振りしたフリをした後、その空振りで掌屈(しょうくつ=手の平側に折った状態)した手首を押し出すようにして、手の甲に当てたボールを相手キッチンに落としています。
これも慣れてしまえばできそうです。
とはいえ、わざわざミスするリスクを犯してやる理由は見当たりませんね。
微妙な点も
2024年5月には、このような意図的なハンドボール(手打ち)を防ぐルール改正が提案されているようです。結局、その際は「改正しなければいけないほど、手で衝撃を緩めるアドバンテージがあるとは考えられない」と不承認になっています。
また不承認の理由のとして、わざわざ改正しなくても
「意図的な場合は『キャリールール』に抵触する恐れが高い」とあります。
キャリールールとは「ボールがパドルに乗っているように感じたり、すくい上げるような動きが見られたらダメ」というものです。
仮にパドルを親指と人差し指で握り、下の3本の指でボールに触れると、弾いた、というより運んだと見なされ、ほぼ確実にフォルトになるでしょう。
現状では、動画のような、故意かどうか明確ではない「ハンドショット」や、意図的にパドルフェース側を持ってグリップエンドで打つ行為を禁止するルールはないそうです。
しかし、ルールを悪用すると今後、改正される恐れもあります。
故意でないと、確実に言い切れるショットでないと、揉め事のタネになるだけです。
真似しない方が賢明でしょう。
念のため、パドルの手に当たってしまった場合、故意でなければセーフ、と覚えておいた方がよいのではないでしょうか。
覚えておきたいオシャレな決め方
先ほどのグランドスマッシュを打つのと同じようなシチュエーションで、周囲を沸かせる、もっと素敵な打ち方がありました。
以前、自陣に落ちたボールがワンバウンドした後、逆回転がかかって敵陣に向かってはねた場合、どう処理したらいいのか? そのルールについて詳細を説明しました。

正解は「敵陣側に身を乗り出してOKですが、ネットタッチとなってはいけません」でしたよね。
かくいう私「ピックル坊や」は、この状況になったら、全力で打った後、必死にネットタッチにならないよう、ネット脇を走り抜けていました。
ところが「こうやればいいんだ!」という目からウロコの動画を見つけました。
▶「pickleball.collective」インスタグラムより
スマッシュを打った青色の帽子の選手。相手からの返球を見て、身を相手キッチン側に乗り出しますが、ボールは相手側に打とうとはしません。
ただネット越しの自分に戻すように、ソフトにネットにぶつけています。
これなら強く打たなくても相手に取られることは絶対ありませんし、確実にネットタッチしていないこともアピールできます。
トリックショットとは言えないかもしれませんが「よくルールを分かってるプレーヤー」「こんなのもあるんだ」と思わせられる、オシャレ感マシマシのショットです。
今後ぜひ打ちたいショットの「マイ・カタログ」の上位に忍ばせています(笑)
