太陽を戦術に使うべきか?

太陽を戦術に使うべきか?

まぶしくて打てない
屋外でのピックルボールは、風、気温、太陽、様々な影響を受けます。
穴開きボールは軽く、落下速度も遅いため、フワフワと浮き上がったボールが太陽光線に激しくさらされると、その処理は難しくなります。
テニスのように、非常事態には一旦ワンバウンドさせてグランドスマッシュという手も使いづらいですよね。
強い日差しに目を細めながら打つロブ。スマッシュを上げた瞬間、視界に飛び込んでくる白い閃光。
時には「こんなの、まともに打てるわけがない」と、苛立ちを覚えることもあります。
こんな時、どうすればいいのでしょうか?
サン・ロブ事件
ここで1つの教訓となる「事件」をお伝えしましょう。
「Lob‑gate」(英語でスキャンダルを意味する俗語)「サン・ロブ事件」と揶揄された、この一件は、2022年10月、ネバダ州ラスベガスの砂漠地帯で晴れた日に行われたPPA女子ダブルス準々決勝で起こりました。
有名な母娘コンビ、リー・ウォーターズとアンナ・リー・ウォーターズに対して、対戦相手のヤナ・グレチキナとレジーナ・フランコが、ある「作戦」を実行に移したのです。
第2ゲームの途中から真上にある太陽に向かって、高々とロブを打ち上げました。
1度や2度ではありません。複数回にわたって執拗に母のリーを狙い撃ちにしたのです。
リーは「そこまでして勝ちたいの!」と、感情をあらわにして声を上げました。
アンナは母を制すように手を取り、タイムアウトを取って落ち着かせましたが、結局このゲームを落としてしまいます。
普段はコーチとして支える母を、当時15歳だった娘がなだめる姿は、観衆に少々おもしろく映ったようです。
第3ゲームのYouTube配信が途切れたことも、意図的に遮断したのではないかとの憶測を呼びました。最終的にはウォーターズ親子がゲームカウント2-1で勝利しました。
戦略として許せる範囲?
グレチキナは「戦略は戦略、落ち着いて」と、興奮するリーに反論したそうです。
確かにルールに則った「戦略」ではあるのですが、「エチケット」としては微妙なラインかもしれません。
みなさんは、次の動画を見て、どう思われますか?
▶「thedinkpickleball」インスタグラムより
プロの「厳しい世界」の話とはいえ、なかなか、あからさまですね。
現地でも、この「戦略」の是非について、かなり物議を醸したそうです。
次の動画には「この3分間が、2022年で最も奇妙なピックルボールの瞬間だった」とのキャプションが付けられています。
▶「nmlpickleball」インスタグラムより
陽動作戦としてはあり?
スポーツマンシップの観点から言えば、あまり褒められたものではないのは確かでしょう。
ただ太陽がまぶしいという条件は、コートチェンジすればお互い同じです。
対戦相手が不利な状況を打破するため、心理面で崩す戦略を取ったと考えれば、どうでしょう?
感情を見事に揺さぶられ、冷静さを失ってしまった、母リーにも、非はないとは言い切れないのではないでしょうか。

一方で、最終的には勝った点は、さすがだと思います。
学ぶべき教訓
この一件から我々が学ぶべき教訓としては、次のようなものがあるのではないでしょうか。
事前にコート状況を知る
事件は砂漠地帯で快晴の日に起きました。
日本でも真夏の太陽が高い時期の屋外開催などで、日光が邪魔になる状況は十分に予想できるでしょう。
普段から習慣づけていれば、時間帯によって太陽がどの位置に来るかも想像できるはずです。
ロブを上げられ見にくい場合は、ドライブボレーに切り替える、パートナーに声掛けして処理を任す、無理にキッチンラインに進まない、などの対処法を事前に想定しておけば、イライラもかなり抑えられるはずです。
なし得る対策を取る
リー親子も対戦相手もサングラスを着用していました。
今や、必要以上に暗くならない、晴天下に適した可視光線透過率(VLT)10〜20%のモデルがたくさん販売されています。
ボールの衝突に備えた、目の保護だけでなく、
日光を軽減できるサングラスも用意した方がよいでしょう。
熱中症予防の意味も兼ね、帽子やサンバイザーも欠かせません。
帽子のツバをうまく使えば、ボールを見失うことなく対処できるかも知れません。
敵か味方か あなたの心次第
いずれにしろ、自然には逆らえません。
穴開きボールの楽しさの1つは、簡単に、風やネットインに左右される、その「不確実性」だと、思います。
太陽も同様に、不確実性の1つだと、楽しめるだけの心の余裕を持ちたいものです。
次のゲームでは、ぜひ空を一度見上げてからプレーを始めてみてください。
太陽が、味方になるか、敵になるかは…あなた次第です。