戦術について

ダブルスのポジション戦略②

picklebouya

ダブルスのパートナーとの位置取りについて、今回は自分サイドが追い込まれた際、どこのコースを「捨てる」かについて、より深く考えたいと思います。

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クロスの方が相手にとって難しい

次の動画を参考にさせていただいています。

▶「Catherine Parenteau」動画より

ダブルスのディンク合戦を思い浮かべてください。4人が前にいます。Aにネットより高い位置のチャンスボールが渡ったとしましょう。

Aが狙うのに最もセオリー通りのコースはどこでしょうか?

動画では「距離の長いクロスが正解と考えている人が多い」と紹介されています。

実際にクロスは距離が長いですか? いいえ違いますね。

クロスだとサイドアウトの危険性が多分にあります。

正解はセンター、ミドルです。ここが一番距離が長いです。

次に確率が高いのはストレート。

センターに比べて距離は多少短くなり、アウトするリスクはありますが、Dの足元を狙え、反応時間を短くすることができます。

ウイナーが決まりやすい分、ダウンザラインの選択肢も間違っていません。

チャンスボールの高さ、自分の体勢、反応時間、得意不得意など、様々な要素がありますので、クロスに打ってはいけないという訳ではないですが、

Cにウオッチされてしまうと、サイドアウトになる可能性が高いです。

赤で示したかなり狭いゾーンを狙うより、Cのボディー付近を目がけ、触ってもらう方が、はるかにポイントを奪える確率は高いと言えるでしょう。

テニスでも、ダブルスコートの「アレー(シングルスサイドラインとダブルスサイドラインの間)は捨てろ」との格言があります。

ポジショニングは前回お伝えした通り、ボールに「寄った」位置が基本です。アングルは非常に難しいコースで、相手に決められた時は、ただ「ナイスショット」と称え、次のポイントに気持ちを切り替えればいい、との教えです。

ピックルボールでも「困ったら、短いクロスは捨てろ」の格言が当てはまります。

逆サイドのBに、チャンスボールが行った場合も同様です。逆クロスにウイナーを奪えるゾーンは思った以上に狭いですから、ストレートとセンターに備えるのがセオリーになります。

次にAB側の立場で考えます。Bがセンターに打ったショットが1発で決まらなかった場合。最もボールが返ってくる可能性として高いのは、Dがフォアで、緑のセンターミドルのコースをインターセプトできたケースです。Aはセンター寄り構えておいて、次のショットで決め切る必要が出てきます。

Bがストレートに打った場合はどうでしょう。Cが電光石火の反応を見せて、狭いクロスに打てる可能性は極めて少ないですから、Aはセンター寄りに構えて、Cのなんとか返球したボールを、次のショットで決めなければなりませんね。

紐は伸び縮みし前後にも動く

前回からパートナーと紐がつながれたような一定の距離を持って動くという極力、分かりやすい説明をしてきました。

ですが、実際のプロはどう動いているのでしょうか。次の2つの動画を見てみてください。

コート手前、ベン・ジョンズとアナ・リー・ウォーターズの不動の世界No.1ミックスペアのポジショニングに注目してください。

▶「pickleballdotcom」インスタグラムより

ここに3つの大事な視点あります。

1つ目は、ベン、アナとも必ずしも「ボールを追う」というセオリー通りの動きをしていないことです。相手にあえてオープンコートを見せて、そちらに打たせるように仕向けている、駆け引きが見られます。それこそが、ベンがボールコントロールの「中心」に立てている理由です。またベンのフォア、アナのバックと、センター寄りから、両方の持ち味を活かした攻撃をしようという意図が見えます。

2つ目として、アナはベンに任せっぱなしではなく、かなりの距離を動いてベンのフォロー、カバーをし続けています。両者の間に結ばれた架空の紐は、コートサイドにまで強く引っ張られることがあっても、バネのように大きく伸び縮みして、切れないギリギリのところで戻っていっているように見えます。第1回目の当欄で、両者の距離は長い場合でも3メートルほどとお伝えしましたが、アナとベンの最大距離は5メートル以上あるのではないでしょうか。最小距離は2メートル弱。こんなにも大きく動くのですね。

3つ目として、両者の架空の紐は左右ばかりではなく、前後にも大きく伸び縮みしているということです。ポイント中盤にベンが前で主導権を握りますが、終盤にベンがコート外に追い出されると、アナがすかさず前を取って、決めきります。大きい左右の動きだけでなく、常に細かい前後の動きが追加されています。そして反応時間を多く確保できる、後ろについた方が、短い方が反応しきれなかった時に、キッチリとカバーし合う陣形を取っていることが分かります。

草むらの中のヘビ

動画再生開始位置から見てください。

女子ダブルスでのコート手前、同じアナの動きです。

ポイント中盤、パートナーの逆クロスへのドロップを見たアナは、スルスルと1人で前に出ます。結果、パートナーと前後の陣形なります。

雁行陣とまでは行きませんが、両者の距離は結構、空いています。

ボールの落下位置だけを考えれば、アナは本来ストレート、ダウンザライン警戒のポジションにいますが、この際にセオリーは当てはまりません。なぜなら相手は、アナとパートナーの空いたスペースを攻めた方が、安全かつ効果的だと判断しているからです。アナはパートナーのボールを横取りするかのように徐々にペースをあげて、最後には見事ポイントを奪ってしまいます。

ウイナーを奪った際、パートナーとの位置は、左サイドに2人が立って、ほぼ重なり合うような状況ですが、

アナがテンポの速いボールを1方向に送り続けている限り、相手ペアがショートクロスやクロス後方など、違うスペースに展開できる機会は全く訪れませんでした。

▶「Pickleball Channel」動画より

これは「Snake in the Grass」「草むらのヘビ」と呼ばれている戦術だそうです。

相手ペアはベースライン付近に取り残されたプレーヤーを、できる限り後方に釘付けにしようと、センター中心からそのプレーヤーの足元を中心に狙ってきます。

アナはそんな「エサ」を撒いた上で、自分は孤立したように見せかけた状態から、突如、牙を向いて果敢にポーチに出ていきます。相手のコースを限定させて、余裕を持ってキッチンラインに立っている分、実にアグレッシブに動けます。

「草むらのヘビ」のネーミング通り、罠にハマった相手にとっては恐怖の戦略となります。

ポジショニングにはセオリーがありますが、

レベルが上がるに連れて、その幅は前後左右に大きく広がり、セオリーを逆利用する方法まであるということですね。

この項ラストとなる次回は、ボールを持っていない時にこそするべき、パートナーを助ける動きについて、考えたいと思います。

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大阪府生まれ。大学までテニス部。大阪から情報発信。ピックルに目覚め、ルンルン楽しく上手くなれるのか検証中
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